

エントランスの企画展示コーナー。「クラムシェルⅡ」の展示台が、飾られた書籍を引き立てている。
2025.1.14
エントランスの企画展示コーナー。「クラムシェルⅡ」の展示台が、飾られた書籍を引き立てている。
エントランスを入ると、従来の図書館のイメージを覆す深い色調でコーディネートされた重厚な空間が広がっていた。切妻屋根の勾配を活かして、中央部を最高10m超の吹き抜けにした天井高が生み出す開放感は圧巻だ。両サイドの天井との高低差もバランスが良く、広い空間に落ち着きを醸し出している。ブラウンを基調にした内装に、間接照明が創り出す陰影が美しい。椅子の素材やデザインが場所ごとに変えられているところにもこだわりが感じられる。
ここは2024年7月、山口県柳井市の小高い丘の上に誕生した「みどりが丘図書館」だ。図書館・市民活動支援・子育て支援・防災の4機能が融合する、新しいスタイルの複合図書館である。「ワークショップ、講演会など多角的コミュニケーションの場になっていて、スタジオでは講座や映画上映会などのイベントも開催しています」と次長の小柳五寛氏は語る。
東西のガラス窓は大きく開かれていて、自然光がふんだんに差し込む一方、南面は書籍の劣化を防止するため、光があまり入らないように配慮されている。また、本を落ち着いて読みたい人向けの“静かな空間”と、おしゃべりができる“にぎやかな空間”が垂れ壁で意識的に仕切られているのも特徴だ。
最高10mを超える勾配天井が開放感をもたらす館内。東側の大開口窓から光が美しく差し込む。
ローテーブル&ソファを配置したギャラリースペース。ホテルラウンジのようなくつろぎの空間が広がる。
7万冊の蔵書を持つ館内には、ホテルのラウンジのようなソファ席や窓際のカウンター席など合計200席が用意され、一角にカフェも併設されている。蓋付きの飲み物は閲覧席に持ち込むことも可能で、利用者はコーヒーを飲みながらくつろいで本を読んだり、学習に集中したりと、思い思いのスタイルで過ごしている。また、広々としたこども図書エリアには絵本の読み聞かせができる「おはなしのへや」や授乳室もあり、親子で訪れて楽しそうに過ごしている利用者の姿がほほえましい。
地元のコーヒー店が運営するカフェスペース。軽食メニューもあり、蓋付きの飲み物は閲覧席にも持ち込める。
子ども図書エリア。垂れ壁で仕切られているので、おしゃべりをしても“静かな空間”に声が漏れにくい。奥にあるカーペット敷きの部屋では絵本の読み聞かせもできる。
デザインを手掛けたのはSUPPOSE DESIGN OFFICE株式会社代表で、建築家の谷尻誠氏。「 “森の中の図書館”をコンセプトに、広い敷地の真ん中に建物を置き、周囲を芝生や木々で緑豊かな公園にするプランを提案しました。図書館の周りに自然があれば、虫や鳥を見つけて図鑑で調べてみたくなるでしょう。読書に興味がない子どもが来ても、本に触れる機会が増えると思います。また、館内はあえてダークな色調で明るさを抑えてリラックスできる雰囲気をつくり、デスクにリーディングライトを備えることで、落ち着いて読書や学習に集中できる環境をつくりました」と語る。
2階・ティーンズ図書エリア。勾配天井が落ち着きを生み、読書や学習に集中できる。
スタジオ(学習室)。リーディングライトやコンセントも完備。
エントランスの企画展示コーナーから受付、カフェ、閲覧席まで、館内のカウンターや造作テーブルには全てコーリアン®「クラムシェルⅡ」が使われている。ベージュ系の上品な流れ模様がシックな内装と調和しつつ、独自の存在感を放っている。トイレの手洗いカウンターもコーリアン®で、こちらはモノトーンの内装に合わせて濃いグレーの「ラバロックⅡ」が採用されている。
東側の窓辺に設けられた閲覧席。シックな内装に流れ模様が美しいロングカウンターが映える。
トイレの手洗いカウンター「ラバロックⅡ」。間接照明で優美に演出されたモノトーンの空間に調和している。
「コーリアン®は人工的な素材でありながらも自然に近い表情を持っていますし、耐久性が高くてメンテナンスも容易ですから、公共施設である図書館に最適だと思います。私も建築家として、常に自然と人工の関係について考えて続けていますので、共感を持って選びました」と谷尻氏。
コーリアン®の印象や普段の手入れについて小柳氏に伺ったところ、「高級感があるので利用者に大切に使っていただけると思いますし、日常の汚れは拭くだけできれいになります。鉛筆汚れの跡も消しゴムでさっと落とせます」と満足されているようだ。
「みどりが丘図書館」のオープンは大きな反響を呼び、柳井市民はもちろんのこと、隣接する岩国市や光市などからも多くの人が訪れるようになったという。以前の図書館に比べて来館者の数も大きく伸び、今や1日平均で800人を超える盛況ぶりだ。今後も交流・体験・学び・発信といった多様な活動を担う公共空間として発展し、たくさんの人々に愛される場となっていくことだろう。
(文:菱沼 晶)
【柳井市立柳井図書館/みどりが丘図書館】
●デザイン・設計/SUPPOSE DESIGN OFFICE
●コーリアン®加工/マーブル建材株式会社
●使用色/クラムシェルⅡ、ラバロックⅡ