デュポン・MCC株式会社
2024.2.27
京都タワーの東側にある雅な和風旅館、「RYOKAN GINKAKU KYOTO」が2023年5月にリニューアルオープン。創業以来70年、「旅館銀閣」として修学旅行生に親しまれてきたが、この度、400名を超える生徒を受け入れられる大規模旅館へと生まれ変わった。高さ規制に合わせて南側を9階建ての高層棟とし、外観は勾配庇や鎧張形状のRC壁に木目塗装を施した外壁、杉無垢材の木格子や木目シート貼のアルミ格子、御影石やボーダータイルなど多彩な材料・工法を駆使し、伝統的な和風木造のしつらえを基本とした京の風情漂うデザインとなっている。広々と開放的なロビーや和風庭園を臨むラウンジでくつろいでいると、館内を流れる水路や岩肌の大壁を流れ落ちる滝の水音に心が安らぐ。
先代から経営を引き継いだ代表取締役の久保田健嗣氏は、「『銀閣』という旅館名にちなんだ京都らしさも大切にしながら、今までの京都にない斬新な旅館を創りたいと考えました」と語る。その言葉通り、和風旅館でありながら館内はスキップフロアのラウンジを除いて床段差のないユニバーサルデザインを採用し、電気錠とエレベーター制御を組み合わせたカードシステムや監視カメラを導入して防犯等の安全管理対策や修学旅行2校同時受け入れ管理にも配慮。400人が一同に集え、食事できる防音仕様の宴会場も備えている。
宿泊客を惹きつける演出も見逃せない。「修学旅行生に京都の伝統と暮らしを学び、体験してもらいたい」という久保田氏の熱い想いから、棟名や室名は京の歴史風土にちなんで名づけられ、そこから連想される和の色彩と素材でコーディネート。61室ある客室のインテリアは、色彩としつらえがすべて異なる。たとえばフロアが広く部屋数の多い3・4階の客室は、「京逍遥~京さんぽ~」をテーマに、「清水の間」、「白河の間」など、京の地名に由来する名称になっている。また、5〜8階はフロアごとに春夏秋冬をテーマにデザイン。共用廊下は季節を感じる色彩とし、各客室は二十四節気・七十二候にちなんで「山茶花の間」、「十六夜(いざよい)の間」といったように命名されている。そして最上階の特別客室は、「桐壺の間」、「葵の間」、「若紫の間」など、源氏物語にちなんだ名称だ。部屋番号を記載したサインプレートには客室名の由来も記載され、付属のQRコードを読み込めば同館のホームページに繋がって、さらに詳しい歴史・観光情報を入手できる工夫が施されている。
「ベッセル型の洗面ボウルと組み合わせてお洒落なデザインにしたかったので、カウンターには高級感があり、小口もきれいに見える
デザインを決める際には
「RYOKAN GINKAKU KYOTO」のオープンは話題を呼び、来年まで予約で埋まるほどの人気を博している。
「昔の『旅館銀閣』に修学旅行でお泊りになった方が教職に就き、再び引率の先生として当館にお越しくださったと聞いたときは、歴史ある旅館を引き継いでよかったと感激しました。今お迎えしている生徒さんにも、大人になったときに思い出して『また泊まりたい』と思っていただけたら、これほどうれしいことはありません」と顔をほころばせる久保田氏。観光だけでは味わえない京の風情に触れ、伝統を学び、かけがえのない思い出づくりができる新しいスタイルの和風旅館として修学旅行生に愛され続けるにちがいない。
【RYOKAN GINKAKU KYOTO】
https://ginkaku.com/
●設計監理者/株式会社京都建築事務所
●施工/真柄建設株式会社
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●使用色/カームベージュ、カームダークブラウン、ブラッククオーツ、カームニュートラル、
カーボンアグリゲート、ウィッチヘーゼルⅡ
PHOTO:YOSHIHITO IMAEDA(外観以外)