PHOTO:YOSHIHITO IMAEDA
デュポン・MCC株式会社
2023.6.22
PHOTO:YOSHIHITO IMAEDA
都心に近い住宅街に完成したO氏邸は、共働きのご夫婦が、子育てと家事がしやすく、人を招きやすい家にしたいと建築家に依頼した住まいだ。設計を手がけたのは、狛デザイン一級建築士事務所代表の狛亜津紗氏。2・3階を貫く開放的な吹き抜けのLDKは、リビング・キッチン・ダイニングのゾーニングをせず、家族も来客も思い思いの場所にいながら、同じ空間で過ごす一体感が得られるようにデザインしたという。その中心となっているのが全長6mものアイランドキッチンだ。
「会話が弾むシーンというのは、キッチンで作業をしていたり、食事をしているときが多いと感じています。ですから、住宅の設計ではいつも、キッチンが中心になるように計画しています」と狛氏。O氏邸では、人を招きたいという施主の要望もあり、キッチンはよりオープンなコミュニケーションの場となるようにデザインされた。
「みんなが参加しやすいキッチンにすることもテーマのひとつでした。ご友人やご親戚がいらしたときに、気を遣わずに料理や片付けに加わってもらえるよう、調理家電はあえて見える場所に置き、グラス類は誰でも取り出しやすい場所に収納するなどの工夫をしています。また、忙しいご夫婦の暮らしを詳しくお聞きする中で、料理を作ってテーブルに出すという動作、食べ終わったあと食器を下げるという動きを、いかにスムーズにするかが大切だと感じました」。
そこで生まれたのが、アイランドキッチンからダイニングテーブルまで、一枚板のようにワークトップがつながるデザイン。滑らかな傾斜を描くワークトップはコーリアン®︎で製作された。
「デザインが途切れることなく、思い描いていたような自然なアールを表現できる素材はコーリアン®︎しかありませんでした。掃除もしやすく、水滴や指紋が目立ちにくいという点でも、家事のしやすさを叶えてくれます。シンクまで同一素材で作れるため、より一体感のあるデザインが実現できました」と狛氏。
LDKの空間全体と一緒に1/20の模型を製作して施主にプレゼンテーションしたというキッチンのデザインを正確に再現し、必要な機能や強度、使いやすさも備えながら実物を設計・製作したのは、神戸 今井商店の家具デザイナー・今井智仁氏だ。O氏邸ではキッチンのほか、洗面化粧台やリビングテーブル、テレビボード、収納システムなどの造作家具をすべて手がけている。
「実際にキッチンを製作するためには、模型の角度やサイズを測ってそのまま拡大すればよいということではなく、完成したときの全体のバランスが重要です。模型を見たときと同じように感動を味わっていただきながら、使い勝手にも満足していただけるよう、繊細な調整を加えています。今回は特に、傾斜部分のアールの角度をどのように設定するか、建築家と相談しながら調整を重ねました」と今井氏。空間全体との大きさのバランスの見極めも大切であるため、施工現場に何度も足を運んだという。
完成したキッチンは、インパクトのある大きさでありながら、インテリアの一部のようにラグジュアリーな空間に溶け込んでいる。家族が、友人が、キッチンに集い、共に手を動かしながら、自然に温かいコミュニケーションが生まれる様子が目に浮かんでくるようだ。
【東京都O氏邸】
●設計/株式会社 狛デザイン一級建築士事務所
●キッチン設計・製作・施工/神戸 今井商店
●コーリアン®︎加工/マーブル建材株式会社
●使用色/ニュートラルアグリゲート