水面の波紋のように
人と人とがつながる円形ベンチ
賢明学院中学高等学校 卒業記念モニュメント

2022.9.16

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この形から、学生たちからは「古墳みたいだ」と親しみを感じる声もあったという。賢明学院中学高等学校が所在する堺市には世界遺産「百舌鳥古墳群」があり、同校の近辺にも古墳が点在する。

 2022年6月、閑静な丘から世界遺産・百舌鳥古墳群を臨む、大阪府堺市のカトリック系学校法人 賢明学院中学高等学校の50期、51期の生徒の卒業記念としてモニュメントが建てられた。波紋のような3段の円形が重なった台座が2つ並び、立木をモチーフとした金属製のパーゴラが目を引く。
 このモニュメントは、学生が自然と集えるようにというリクエストを受けて、関西学院大学建築学部の八木康夫教授が設計を担当した。完成から程なく、学生たちが自然と集まるスポットとなっている。八木教授は、モニュメントについてこのように語る。
 「波紋と立木をモチーフに、卒業生や生徒たちの関わりが水面の波紋のように幾重にも輪を描いて広がる様子を表現しました。パーゴラのデザインには”桃李成蹊”の言葉のように、果実をつける樹木(桃李)の下に自然と人が集まり、道ができていく様を表現しました。
 完成してみると、コーリアン®をしっかり目地で埋めたことで、“むっくりとした”存在感のある仕上がりになりました。蓄熱しにくいのか、直射日光に照らされた昼間でも、手で触ると少しひんやりしていますね」。

台座部分には、主にコーリアン®「グレイシアホワイト」を直径100mmの円形に切り出したものをタイルのように埋め込んだ。

 腰掛けられる台座部分はコンクリート製で、その上からコーリアン®をタイルのように貼って仕上げている。
コーリアン®を円形や四角に切り出し、コンクリートにタイルとして埋め込むデザインは画期的だ。
 「台座の仕上げ材料として、屋外構造物の床に多く使われる割り石調は、円を描くデザインには向かないとわかっていました。また、焼成タイルにもちょうど良いものがなかった。そこでコーリアン®を丸く成形したらどうだろうと考えました。採用色は“聖なる白”というイメージにぴったりの“グレイシアホワイト”です」と八木教授は説明を加えて下さった。
 賢明学院中学高等学校が関西学院大学の系属校となっている縁から、このモニュメント制作には関西学院大学の学生が計画段階から参加しており、コーリアン®の施工も学生たちと一丸となって試行錯誤を繰り返しながら作り上げた。
 台座はコンクリート型枠を脱型後、まず円形のコーリアン®を位置合わせしながらセメント貼りにし、その上で周囲の目地を手作業で埋めていった。
コーリアン®をタイル形状にしたので、割り付けも図面で検討し、学生たちと1900枚にものぼるコーリアン®を1枚、1枚、丁寧に貼っていきました」と八木教授は振り返る。
 美観を長期的に保つため、座面に埋め込む際、コーリアン®の厚みを1mm程度残して「浅目地仕上げ」にした。面を目地に揃える「ぞろ仕上げ」では目地割れが目立つ可能性があり、一方、目地をあまり埋めない「深目地仕上げ」では雨水が溜まって汚れやすくなる。浅目地はその中間で、目地割れが目立ちにくく、汚れを防ぐ効果がある。
 このモニュメントがある空間が生徒にとって「学び舎に記憶をとどめる」きっかけとなってくれるだろう。

【賢明学院中学高等学校 卒業記念モニュメント】
●設計/関西学院大学 建築学部 教授 八木康夫
コーリアン®加工/株式会社エービーシー商会
●使用色/グレイシアホワイト