PHOTO: KENTA HASEGAWA
デュポン・MCC株式会社
2022.4.28
PHOTO: KENTA HASEGAWA
通信設備工事大手で東証プライム上場のエクシオグループは、2021年秋、本社ビル(東京・渋谷)のエントランスを一新した。最大のポイントは、エントランス空間のほぼ中央に配置した、真っ白な円盤だ。前面道路の歩道からガラス越しに見ることもでき、外見からも分かる建物の印象的なワンポイントとなっている。
円盤は、一部を建物の円柱に貫かれ、少し傾いた状態で床から浮いているように見える。直径は約7m、平面図上ではほぼ真円だ。エントランス内部では、上部の天井側で照明器具をグリッド配置し、フラットな平面を点描したのと相まって、幾何学的なデザインを構成している。
この円盤を実現したのが、
改修プロジェクトの基本設計および実施設計監修を手がけたMMAAA一級建築士事務所(東京・世田谷)の本橋良介氏は、このデザインについて、エントランスをより広く使うため「印象的な意匠でシンプルにまとめる」意図があると語る。
円盤には写真撮影時の「レフ板」に似た機能も持たせた。天井から吊った照明の光を円盤に反射させ、間接光で空間を照らす狙いだ。空間全体の光のムラを無くし、外光の変化に左右されにくくなり、約200m2のエントランス空間がより広く感じられるようになった。
円盤の仕上げについて、本橋氏は「こういう印象を左右する意匠に目地があると、視覚的には『普通』で、驚きがありません。幾何学的なデザインの特徴を研ぎ澄ますため、シームレスにはこだわった」と強調する。一般的なボード建材と左官仕上げの組み合わせも候補に挙がったが、クラック発生の懸念があることから、盤面の材料自体を
採用したのは複数のホワイトカラーの中でもイエロー寄りの「カメオホワイト」だ。「これまで手がけてきた住宅でも
なお円盤は単なる意匠デザインの要素のみではない。企業のエントランス空間は来訪者のウェイティングルームでもあり、軽い打ち合わせなどを行う場合もある。そこでこの円盤は十分な載荷性能を確保することで、腰掛けたり、打ち合わせデスク代わりに使ったりする機能を付加している。
このため円盤の外周は厚さ12mmの
円盤の下部構造は500mmピッチで組んだ鉄骨製の架台で、上面に厚さ12mmの構造用合板を敷いて傾いた平面を構築し、その上にさらに厚さ12mmの
【エクシオグループ本社ビル】
●デザイン/MMAAA 本橋良介+三木達郎
●使用色/カメオホワイト
本橋 良介 氏
MMAAA一級建築士事務所共同主宰。1981年、大阪生まれ。2003年、東京工業大学工学部建築学科卒業後、仏パリ・ラヴィレット建築大学へ留学。2009年、東京工業大学大学院建築学専攻博士後期課程、満期退学。仏建築設計事務所勤務などを経て17年から現職。22年から明治大学兼任講師。