阿蘇の自然とつながる小空間。トイレを安息の場所に アミュプラザくまもと

2022.1.12

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商業施設、空港、駅、公園、学校、病院など、さまざまな場所の公共トイレを手がけ、革新的な提案で日本のトイレ設計を牽引してきた設計事務所ゴンドラ。クリエイティブな発想でトイレをデザインする同社にとって、コーリアン®は「なくてはならない素材」だという。2021年4月にグランドオープンした複合商業施設「アミュプラザくまもと」のトイレでもコーリアン®を設計の要となる部分に採用している。阿蘇の水源からインスピレーションを得たというこのトイレについて、設計事務所ゴンドラの代表である小林純子氏にお話をうかがった。

バイオフィリックな商業空間のトイレ

「アミュプラザくまもと」は、再開発の進むJR熊本駅前に竣工した「JR熊本駅ビル」の1〜8階に開業した。同ビルは、空間デザインに自然を取り入れるバイオフィリック・デザインを採用。1階から7階までつながる大きな吹き抜け空間に設けられた立体庭園には、幅10m、高さ10mの滝が流れ落ちるなど、熊本の自然を象徴する「水と緑」が随所に表現されている。
「プロジェクトに参加してすぐ、まずは南阿蘇にある白川水源をぜひ見てほしいとのお話がありました」と小林氏。白川水源は、阿蘇高岳の南麓から熊本市内を流れ、有明海に流れ込む一級河川・白川の水源の一つ。日本の名水百選にも選ばれている。
「実際に足を運んでみると、それはそれはきれいな、阿蘇の水を湛えた水源でした。驚くほど透明度が高く、水の湧き出る様子をつぶさに見ることができる美しい水の風景は、生命の根源であり私たちの命を育む『水』というものの存在を、強く意識させてくれました」。

自然とのつながりを感じながらも、安心して、ひとときを過ごすことができる場所として、白川水源で感じた神聖な印象を「サンクチュアリ」というテーマに表現し、デザインした4階トイレ。ラグジュアリー感が漂い、ソファやドレッサーを置いたパウダーコーナーも併設している。

その想いを反映し、「アミュプラザくまもと」のトイレでは、手洗いを水の湧く場所、人や動物の集まる水源といったイメージで設計。各フロアとも、独立した手洗いを空間のセンターにレイアウトした。また、トイレ全体のデザインは、ビル全体の設計コンセプトに寄り添い、自然を身近に感じることができる要素を盛り込んだ。
たとえば、6階のトイレは、木を感じる素材を多用して、素朴で温かなスペースに。4階のトイレでは、立体庭園を有する館内全体を「外部=自然」と位置づけ、豊かな自然に囲まれたリゾート地の邸宅やサンクチュアリといった、エレガントでありながら、ナチュラルなリフレッシュスペースを表現。外部との間仕切りを目隠しのシートを貼ったガラスの衝立にすることで、自然とのつながりや奥行きのある空間を演出している。

手洗いを空間のセンターに配置し、水の沸く場所、水源を表現(4階女性用トイレ)。

新しいトイレの存在意義を発信

「アミュプラザくまもと」が入っているJR熊本駅ビルは、各県で駅ビル建設を進めているJR九州の7つめの駅ビルだ。設計事務所ゴンドラは、2000年に開業したJR長崎駅ビル以降、鹿児島中央駅、博多駅、大分駅、そして熊本駅と、宮崎駅を除くすべての駅ビルでトイレの設計を手がけてきた。
「20年を超える長いお付き合いになりますので、クライアントのトイレに対するお考えもどんどん変化してきました。最初は、トイレの機能にプラスして、心が潤う場所として設計し、集客につなげていこうということで始まりました。次にメンテナンス性やユニバーサルデザイン、コストバランスなども重視されるようなり、よい部分は維持しながらも、常に新しいことに挑戦を重ねてきました。今回の熊本では、トイレを単独で考えるのではなく、ビル全体の空間と一体となるものとして設計し、総合的な魅力で集客を拡大していこうという意向が話し合いの中で伝わってきました。そこで、私たちもこれまで大切にしてきた要素に加えて、自然を意識したトイレをご提案しました。共にトイレの成長を見守ってきたクライアントと、私たちの仕事の集大成と言えるトイレです」。

コーリアン®のグレイシアホワイトとパールグレーを使用。素材に囲まれる空間だからこそ、色柄の選定は繊細だ。シックさを狙った白とグレーの組み合わせが、殺伐さにならないよう、無機質な色の組み合わせでも、ナチュラルさのあるカラーが選ばれた(4階女性用トイレ)。

小林氏がトイレの設計を手掛けるようになって約35年。その間にトイレの役割も大きく変化してきたという。たとえば、もともとトイレは衛生上の観点などから、建物の端や裏側に目立たないように配置されていた。商業施設などでは、長い通路を進んだ先にようやくトイレがあることも多かった。
そうした状況下で小林氏は、トイレの質を向上させるとともに、通路もデザインの対象とし、役割を持たせるなどして、店舗とトイレに繋がりをつくる提案を重ねた。やがて、商業施設を中心にトイレの重要性が理解されるようになり、あらゆる場面で、建築の設計段階からプロジェクトに参加することが増えたという。
「どのようにトイレを建築全体の空間に参加させるか、ということを常に意識して設計をしてきました。その結果、アミュプラザくまもとのように、建築と一体となったトイレの提案なども実現させることができるようになりました。そうした積み重ねが実り、現在では、トイレの位置を窓際に移動して自然光を取り入れたり、休憩施設を併設するトイレなど、あたらしい形のトイレも手がけています」。

男性用トイレは壁付けのシンプルなデザイン。水栓はすべてハンドドライヤーが一体となったダイソンのものを採用(4階男性用トイレ)。

自由な発想を支える、欠かせない素材

「トイレというのは、1、2m先に必ず壁がある、囲われた空間です。ですから、意識をしなくても素材を身近に感じてしまいます。利用者がその場所に身を置いたときにどのように感じるかに直接関わります。素材や色選びは、空間を演出する大きな要素だと考えています」と小林氏。数ある人工大理石の中でも色数や柄幅の多いコーリアン®でなければ、表現できないデザインがあるという。
「建築では光や影といった自然の要素を生かした空間演出を取り入れることが多いのですが、トイレは外光をいれにくいことが多く、すべての要素を人工的に作り、空間を演出することが多いです。だからこそ、一つひとつの要素を大切に選んでいかなければ、構成に変化をつけることが難しくなります」。

円形の子ども用ブースの間に設けられた手洗いには、コーリアン®インペリアルイエローを使用。

一方で、水に強いという特性については、使用する場所によってはポストフォームで十分であることもあるそう。それでも、コーリアン®を選び続ける理由をお聞きした。
「汚れにくく、手入れも簡単ですから、いつまでもきれいに保つためにはコーリアン®がよいと思います。もし、コストを優先して性能を下げたとしたら、結局は長寿命でなくなってしまいます。また、多くの素材では端部が貼りものになりますが、無垢材であるコーリアン®は私たちが描いたとおりに加工することが可能です。自由な発想でデザインができる素材として手放せません。優しくて丈夫で、これに変わる素材はなかなかないと思います」。
快適を保ち、イマジネーションあふれるアイデアに制限をつけず表現できる素材として、進化を続けるトイレ空間にこれからも欠かせない素材であることを話してくださった。

控えめなクランチが混じったやさしい流れ模様のニュートラルコンクリートは、使用する面積が広くなっても奥行きを感じる柄で、無垢材ならではの存在感を感じる仕上がりに。

【アミュプラザくまもと】
●発注者/九州旅客鉄道株式会社
●運営/株式会社JR熊本シティ
●設計/株式会社日建設計
●施工/株式会社大林組
●トイレ設計/有限会社 設計事務所ゴンドラ
●使用色/パールグレー、グレイシアホワイト、ニュートラルコンクリート、インペリアルイエロー