産学共同プロジェクト コラボレーション企画 コーリアンと多摩美術大学 学生コミュニティTCG Tama Creative Guild

産学共同プロジェクト
■CORIAN® X TAMA ART UNIVERSITY

コーリアン®と多摩美術大学の学生コミュニティ、TCG(Tama Creative Guild)とのコラボレーション企画。
コーリアン®とは?」のレクチャーや、加工体験の研修会を受講した後、TCGメンバーが、構想・デザイン案を作成。何度も試作を重ね、完成までほぼ1年をかけたプロジェクトとなりました。コーリアン®の廃番になったカットサンプルを使った、「CORIAN®をもっと身近に」をテーマに完成した3作品をご紹介します。

Taste of Corian® コーリアン®で作る和の食風景

コーリアン®の加工技術を短期間にマスターし、高度なテクニックを使い完成した和食器セット。
手にとると、その繊細で柔らかな感触が伝わってきます。何を盛りつけようか?と食風景のイメージが広がる食器です。

食風景のイメージが広がる食器

Sound of Corian® 音楽であなたらしい空間を作る

コーリアン®でレコードを作るという斬新なアイディア。
12mm厚のコーリアン®を薄く削り出し、その上に音をのせました。ヴィヴァルディの「春」、グリーグのペールギュント組曲から「朝」、ショパンの「子犬のワルツ」のメロディがコーリアン®製のレコードから聴こえてきます。目と耳と触感で楽しめるレコードです。

コーリアン®でレコードを作るという斬新なアイディア ヴィヴァルディの「春」、グリーグのペールギュント組曲から「朝」、シューベルトの「子犬のワルツ」のメロディがコーリアン®製

Emotion with Corian®
物理的な意味を超えた、素材としてコーリアン®がもっている感性的価値の探求

人工と自然という概念が人の感性にもたらすものとは?をテーマにしたワークショップ。本物の石ころとコーリアン®が、“カタチ”という一つの同じ要素を持っていたなら、それを手に取った時、あなたは何を感じるでしょうか。

人工と自然という概念が人の感性にもたらすものとは?をテーマにしたワークショップ

コーリアン® との出会いからプロジェクト開始へ

このプロジェクトは、プロダクトデザイン専攻4年高橋 凜太郎 さん が個人的にコーリアン®に興味をもって下さり、弊社へサンプル請求をしてくれたことがきっかけでした。
コーリアン®を使って何をしようと考えているの?と思いながら連絡を取り、サンプルを提供する事から始まりました。
その後、高橋さんが所属するTama Creative Guild(TCG) のメンバーへコーリアン®の製品説明会とワークショップを開催する事になりました。(TCGとは、学科横断型の学生コミュニティー。学科を超えて作品を共作する事を目的とし、情報デザインコース、メディア芸術コース、プロダクトデザイン専攻、彫刻学科など、幅広い学科の学生が所属しています。デザインに、創作活動に、そして素材に興味関心を持った、アクティブな学生さんたちです)
最初にオンラインでのコーリアン®についての講義を行い、そして実際にコーリアン®に触れてみるワークショップ(加工研修)へと進みました。ワークショップは多摩美術大学の八王子キャンパス内の施設をお借りして開催しました。八王子キャンパスにお邪魔したのは4月下旬。緑豊かな広大な敷地に最新の設備を備えた、うらやましい限りの環境です。

コーリアン®との出会いからプロジェクト開始へ

今回のワークショップ開催にあたり、私たちとしては、将来のデザイナーたちに、コーリアン®を知ってもらい、コーリアン®ファンになって欲しい。という思いもありましたが、これから活躍する彼らに、コーリアン®だけではなく、様々な素材を知り、理解することの大切さを知って欲しい。という願いもこめて開催しました。研修会の主な目的は基本的なコーリアン®の加工特性を体感していただくことです。
タイベック®製のジャンパーを着て、さあスタートです!

研修会の主な目的は基本的なコーリアン®の加工特性を体感

まずはコーリアン®専用の接着剤を使用し、コーリアン®同士の接着作業。
接着剤を注入。この季節だと圧着して待つこと数十分で接着剤が乾きます。それをまずはカンナで粗削り。あとは平滑になるまでサンダーで磨きます。専用接着剤を使用することで、継ぎ目がほとんど目立たない、きれいな仕上がりになります。

コーリアン®専用の接着剤を使用し、コーリアン®同士の接着作業

今度は曲がることの体感。
本来は加工屋さんの工場の大きなオーブンで135℃~160℃程度まであたため、オスメスの木型にあてて成型します。今回は簡易的に家庭用トースターを使用。あたたまったコーリアン®の小片を手でじわーっと曲げてみました。色柄にもよりますが、12㎜厚のコーリアン®だと、最小内Rで100㎜から200㎜程度まで曲げることができます。曲線で表現されたコーリアン®は独特の質感が増し、触らずにはいられない素材感を醸し出します。かのザハ・ハディッドもコーリアン®の加工性を生かして、有機的な曲線美を持った作品をデザインしているんですよ!
みんな手先が器用で、作業はとてもスムーズに進んでいきました。

ザハ・ハディッドもコーリアン®の加工性を生かして、有機的な曲線美を持った作品をデザイン

■発表会のようす(2021.6.29)

6/29に開催した成果発表会の様子をご紹介します。
メンバーは4/23の加工ワークショップで初めてコーリアン®に触れ、6/8の中間ミーティングでコンセプト固め。そこから、製作期間はわずか3週間。どんな作品が完成するのか心待ちにしつつ、学校の課題は大丈夫なのかしら…と心配しながら迎えた当日。
その作品はとても完成度の高いものでした。

TCGメンバーが立派なポスターまで作ってくれました!

TCGメンバーが立派なポスターまで作ってくれました!

1:音、2:味覚、3:感情という目には見えないものをコーリアン®という素材を通じ、見えるものとして表現した作品。一つずつご紹介していきましょう。
最初はレコードです。

音、味覚、感情という目には見えないものをコーリアン®という素材を通じ、見えるものとして表現した作品

始めて「コーリアン®でレコードを。」と聞いたとき、斬新な発想にびっくりしました。ましてやデジタル世代の学生たちが、敢えてレコードとは。
“実は身近にあるけど一般的には認知されていないコーリアン®。そしてレトロブームで人気復活の兆しはあるものの、なかなか身近には無いレコード。これらを掛け合わせて出来上がる作品の面白さを感じて欲しい。”というコンセプト。
カラーバリエーション豊富なコーリアン®のレコードは飾れば目にも美しく、そして音楽も空間を構成する要素の一つととらえ、目には見えない要素にも着目したレコード。ルーターで加工したりレーザーを使ったり。試行錯誤の結果、まだ雑音が入る状態ではありましたが、その向こうに確実にヴィヴァルディの春が!コーリアン®を通して音に触れることを体感できた気がします。なんでも、コーリアン®の柄によって音の再現性にも違いがあるのだとか。
「今後レコードジャケットもコーリアン®で作ってみたい!」との声もあったので、楽しみにしたいと思います。

コーリアン®でレコードを。

次はカトラリーと食器です。
コーリアン®が生み出す和の食風景”をコンセプトに、お盆・お茶碗・お皿・お箸・箸置きまで。お茶碗は金継ぎの技法をシーム接着剤で再現しています。コーリアン®を積層し、削り出してお椀を作り、そのお椀を割る実験まで。
質感や重量感にもこだわりながら、こちらも試行錯誤の末に出来上がった作品を通して、和の食文化の奥深さを私たちも再認識させてもらいました。この器にどんなおかず盛りつけようか。想像するだけでワクワクします。内装材として使用されるコーリアン®。身近にあるにもかかわらず、一般の方に知られていないコーリアン®をもっと知って欲しい。そんな思いをメンバーが持ってくれたことが嬉しかったです。

コーリアン®が生み出す和の食風景”をコンセプトに、お盆・お茶碗・お皿・お箸・箸置きまで。お茶碗は金継ぎの技法をシーム接着剤で再現

そして人工大理石と天然石の1要素を抽出して、それら素材のもつ本質と向き合うワークショップ企画。
河原で拾ってきた石。その石と同じ形をコーリアン®で再現したら、重さは?質感は?そして河原の石とコーリアン®それぞれに対してどんな印象を抱くのか。“素材が何かを作るために使われる物理的な価値以上に、人にどのような感性的な影響を与えられるのかについて考える”という、私たちには到底思いつかないようなコンセプト。実際に小石と同じ形に再現したコーリアン®は、想像以上に軽くてびっくり。ほかにも、同じ色だったら?重さが同じだったら?など。“人工と自然という概念が人の感性にもたらすものとは?”改めて私たちも向き合うべきテーマだと思いました。

人工大理石と天然石の1要素を抽出して、それら素材のもつ本質と向き合うワークショップ企画

何故コーリアン®でこの作品を作るのか。そして世の中にどう見せたいのか。明確なコンセプトを打ちだし、プレゼンし、そして作品を制作する能力とエネルギーを持った素敵なメンバーたち。今回我々もおおいに刺激を受けました。
真摯にコーリアン®と向き合ってくれたことに心から感謝です。彼らの伸びしろは計り知れません。今後どんな風に成長し活躍してくれるのか、今からとても楽しみです。そしてコーリアン®という素材は、こんな魅力的な人々との出会いの場を作ってくれる素材なのだと、(手前みそではありますが)コーリアン®にも感謝です。

メンバーたちの試行錯誤の様子はこちらのサイトからご覧いただけます。

p_CORIAN® x TamaCreativeClub | Design System (notion.so)

■企画展のようす(2021.12.15~26) [多摩美術大学 TUB 企画展]

企画展のようす [多摩美術大学 TUB 企画展]

東京ミッドタウン・ミッドタウンタワー5F デザインHUB内の多摩美術大学TUBで、同学の学生コミュニティであるTCG(Tama Creative Guild)とデュポン・MCCとの産学共同展示会「Creative Confluence ~人工大理石の探求~」が開催されました。
TCGの紹介、本コラボレーション企画の紹介と歩み、コーリアン®の紹介コーナーとともにTCGのメンバーが「CORIAN®をもっと身近に」をテーマに、コーリアン®の廃番になったサンプルを活用して制作した作品が展示されました。

多摩美術大学TUBで、同学の学生コミュニティであるTCG(Tama Creative Guild)とデュポン・MCCとの産学共同展示会

展示会テーマ Creative Confluenceとは

Creative Confluence直訳すると創造的合流。Confluenceには、合流点、群衆という意味がある。私たちは学科・学部、さらにアート・デザインの枠組みを超えて、個人のクリエイティブを合流し作品を生み出した。その通過点として、この展示がある。大学は、別々の専門領域やバックグラウンドを持つ人間が集まる。しかし、意識的に交わることがなければ個々の領域は分断してしまう。そのため、私たちは意識的に個々のクリエイティビティを交わらせることで環境や専門領域をより活かすことができると考える。今回私たちは、「CORIAN®をもっと身近に」というテーマをもとに、作品を制作した。展示では、CORIAN®という素材を手にした時から完成するまでのプロセスや最終的な制作物を紹介する。一つの素材に対して思考を重ねる中で、素材から何が生まれるのか、どう生まれるのか探求の成果を是非ご覧頂きたい。

多摩美術大学の学生コミュニティ、TCGが作成した展示会案内より引用
※Tama Creative Guild (TCG)は、2021年1月に設立された、異なる領域間の交流を目的とした学生コミュニティです。

■素材研究室 CMTELでの展示会(2022.6.1~24)[コーリアン®展]

素材研究室 CMTELでの展示会

2022年6月1日から6月24日にかけ、多摩美術大学・素材研究室CMTEL (Color Material Trend Experiment & Exploration Laboratory)で「コーリアン®展」が開催されました。デュポン・MCC株式会社とのコラボレーション企画で、デザインの未来を担う美大生の皆さんに素材としてのコーリアン®を知っていただく貴重な機会となりました。CMTELは米国のArt Center College of Designと連携する形で07年に同大学が設置した、美術素材の最新情報を集積する日本初の施設です。

多摩美術大学・素材研究室CMTEL(Color Material Trend Experiment & Exploration Laboratory)で「コーリアン展」が開催 多摩美術大学・素材研究室CMTEL(Color Material Trend Experiment & Exploration Laboratory)で「コーリアン展」が開催 多摩美術大学・素材研究室CMTEL(Color Material Trend Experiment & Exploration Laboratory)で「コーリアン展」が開催 多摩美術大学・素材研究室CMTEL(Color Material Trend Experiment & Exploration Laboratory)で「コーリアン展」が開催

今回は「CORIAN®をもっと身近に」をテーマとして、同大学の学部を横断した学生コミュニティ「TCG(Tama Creative Guild)」の手による作品を展示したものです。各作品の制作グループより、代表でお一人ずつそれぞれの作品について語っていただきました。

高橋 凜太郎 さん (プロダクトデザイン専攻4年)

 普段はキッチンウンターなどによく使われるコーリアン®。相性の良い分野がまだまだあるのでは。そう考え、自分が注目したのは「和」の食卓でした。昔から日本の食器は木や陶器でできていて、大理石など重い素材が使われることはありません。ではコーリアン®で食器を作ったらどうなるだろう、と試してみたくなりました。
 1作目はコーリアン®の特性を生かし、極限まで薄くしたところ、チープさが出てしまったので2作目ではあえて肉厚で、石のような安心感のある重みに調節しました。このブラッシュアップで作品として格段に向上したと思います。視覚情報と実際に手で感じる情報を一致させることができ、より自分達の表現したかった食風景を創造することができました。
 展示では、鑑賞者から「実際に購入することは可能ですか?」と聞かれたこともありました。
作品を通じ、鑑賞者が自分だけの和の食風景を想起する。
 これが自分の狙った状況でしたから、大変嬉しい質問でした。

普段はキッチンウンターなどによく使われるコーリアン®

木村 紗妃 さん(メディア芸術コース4年)

 コーリアン®は家具や内装意匠によく使われる、空間を構成する素材です。私たちは「音楽も空間を構成する要素の1つ」と考え、コーリアン®を切削加工してアナログレコードを制作しました。電動サンダーなどで薄く加工したコーリアン®のレコード盤に、レーザーカッターでレコード溝を彫り込む、という手順で実現しました。アナログレコードの魅力の1つでもある紙ジャケットも、オリジナルデザインで制作しました。
 過去に、木の原盤を使い、これと同様にアナログレコードを制作された方がいらっしゃって、その加工手法を応用したものです。
 この作品では、原音に比べてノイズが乗っているものの、音楽として認識できるレベルまで加工精度を上げることができました。実際に音が鳴るまで試行錯誤の連続でしたが、成功してみると「コーリアン®から音が鳴っている」ということに感動し、感慨深かったです。

コーリアン®は家具や内装意匠によく使われる、空間を構成する素材

Bak Somin さん(メディア芸術コース4年)

 コーリアン®は「人工大理石」にカテゴライズされる素材ですが、「人工」という言葉は「自然」の反語なのでネガティブなニュアンスも含みます。そんなコーリアン®にも素材としての独自の特性があります。コーリアン®を自然石と寸分違わず同じ形に加工し、手に取ったら、本物の石より軽いなど、見た目とのギャップを感じるはずです。この手法でコーリアン®という素材の本質、アイデンティティを直感的に表現できると考えました。
 制作では、まず河原などで拾った自然石を高精度3Dスキャナにかけ、デジタル空間上の3Dモデルを生成。このモデルデータを使ってNCルーターを動かし、コーリアン®を切削加工しました。自然石と一緒に並べてしまうと、見た目ではほとんど区別が付きません。展示ではこの視点を多くの鑑賞者に共感してもらうことができ、得がたい経験になりました。

コーリアン®は「人工大理石」にカテゴライズされる素材

白川 美姫さん(情報デザインコース2年)

 コーリアン®は色と柄が素敵な素材なので、展示会やワークショップの来訪者が気軽に参加できるデザインとして、アンケートの「投票箱」を考案しました。積み木状にカットしたコーリアン®を用意し、来訪者が好きな色・柄を回答棚の溝に落としていく、という仕組みです。設問を変えれば、様々な用途に使えると思います。
 来訪者の投票結果次第で毎回異なる地層が生み出されます。本来、自然のモノであるはずの地層を、質問への返答を通して自らの手で作り出す行為を楽しんでもらえればと思います。
この作品はすごく好評で、毎回、面白い模様が生まれています。
 個人的には、コーリアン®は「ウイッチヘーゼル」がすごく好きなのですが、これまでの展示では「シトラスオレンジ」が意外に人気でした。

コーリアン®は色と柄が素敵な素材 コーリアン®は色と柄が素敵な素材