Ⓒcorareartisansjapan
古い商家のしつらえを活かした空間に据えたキッチン。伝統色の利休鼠から着想を得た「リキュウグレー」が古材や塗壁と馴染み、酒と料理を引き立てる。
デュポン・MCC株式会社
2026.2.12
信州上田、歴史薫る北国街道・柳町で、350余年にわたり酒を醸し続けてきた岡崎酒造。看板銘柄「信州亀齢(しんしゅうきれい)」の芳醇でキレのある味わいは、多くの愛好家を魅了している。この岡崎酒造の通り向かいに佇む古い商家が改修され、一棟貸しの酒蔵ホテル® KIREIに生まれ変わった。
趣のある暖簾をくぐると、古き良き商家の風情と現代の洗練が融合した空間に、チェックインカウンターを兼ねたアイランドキッチンが佇んでいる。天板から側面までコーリアン®で包み込まれた塊感のある造形は、美を極めたオブジェのよう。古い梁や土間が見せる経年の表情と、どこか懐かしさを感じさせる端正なキッチンが調和している。
古き時代の面影を残す信州上田、柳町の町並み。酒蔵ホテル® KIREIは、この地で酒を醸してきた岡崎酒造の通り向かいに佇む。
大正時代に移築された古い商家の趣ある佇まいを生かしてデザインされたファサード。
設計デザインを担当したのは、富山県南砺市を拠点とする株式会社コラレアルチザンジャパン代表取締役の山川智嗣氏と取締役の山川さつき氏ご夫妻だ。「この商家が歩んできた時間をできるだけそのまま残したかったので、土間の補修跡やコンクリートのひび割れも含めて時間のレイヤーと捉え、現しのまま活かしています。しっとりとした質感で、光を吸い込むような陰影が出るコーリアン®をキッチンに使うことで、こうした既存の古さを味わいとして際立たせることができると思いました。また、チェックイン時に宿泊者が触れたときに感じる手触りも大事です。コーリアン®は石材のような冷たさや硬さがなく、やさしい温もりが感じられるのも魅力でした」と山川氏は語る。
ゲストは料理がキッチンで美しく仕上げられる様子を眺め、隣に配置された小上がりの座敷で銘酒とともに味わうことができる。
チェックインカウンターの天板に採用されたのはコテトテシリーズの「リキュウグレー」。左官仕上げの手わざを思わせる質感と、伝統色である利休鼠の深みを持つ繊細な色柄だ。既存の土間の年月を経たグレーと重なり合い、古梁、塗り壁、実際に蔵で用いられた酒瓶を溶融再生したリメルトガラスの照明とも美しく織り成し合って、空間に落ち着きと品格をもたらしている。
「“リキュウグレー”は古材や土間の色味を邪魔せず、むしろそれぞれを引き立てて、全体の調和を保つことができる色合いです。光の当たり方で表情が変わる質感は、古い商家のしつらえともしっくりと馴染み、素材の温度差を感じさせません」と山川氏。
チェックインカウンターとしても利用。コーリアン®は石のように冷たすぎず、しっとりと心地よい手触りが感じられる。
仕上がりの美しさには、山川氏自身も驚いたという。
「シームレスジョイントはコーリアン®の大きな強みだと知っていましたが、完成した姿を見たとき、本当に継ぎ目がわからなくて感嘆しました。玄関でゲストを迎え、宿の第一印象を決定づけるのがこのキッチンですから、素材としてとても良い選択だったと思います」
機能面でも安心感が大きいという。「キッチンなので、耐水性・耐汚性は必須です。コーリアン®は汚れが染みにくいし、お手入れも簡単。ゲストの前で使う場所なので、手間をかけずに清潔感を保てるのも利点ですね」と山川氏は語る。
このキッチンは、岡崎酒造の銘酒、四季を味わう肴や料理、そして手しごとでつくられた器やしつらえなど、信州上田の地に息づく文化をゲストに伝える舞台だ。蔵人兼料理人の手によって料理が仕上げられ、美しく盛り付けられる様子は見応えがあり、コーリアン®「リキュウグレー」の天板が皿や器、料理の色を華やかに映し出す。ゲストは完成した料理とペアリングされた日本酒を、キッチンの隣に配置された小上がりの座敷でそのまま楽しむことができる趣向だ。
天板、側面とも「リキュウグレー」で統一。継ぎ目が目立ちにくいシームレス接着で、まるで石を切り出したような塊感のある美しい仕上がりに。
老舗酒蔵の歴史を受けとめ、特別感のある料理宿として新しい時間を重ねていく酒蔵ホテル® KIREI。その玄関で旅人を迎え、五感で楽しむ料理体験を提供するキッチン空間は、訪れた人の記憶に確かな余韻として残り続けるだろう。
(文:菱沼 晶)
【酒蔵ホテル® KIREI】
●所在地/〒386-0012 長野県上田市中央4丁目8-8
●デザイン・設計/株式会社コラレアルチザンジャパン
●使用色/リキュウグレー
「酒蔵ホテル® KIREI」はⒸKURABITO STAY, inc.の登録商標です。