とりどりの煌めきを包み込む大地のようなショーケース
ヴイエーヴァンドーム青山　ルミネ立川店

2025.9.12

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PHOTO:YOSHIHITO IMAEDA

柔らかな曲線で構成されたコンセプチュアルなデザインが目をひく「ヴイエーヴァンドーム青山」ルミネ立川店。

宝探しのようなジュエリー選びを、心地よく没入できる空間で

　2025年3月にオープンした「ヴイエーヴァンドーム青山ルミネ立川店」は、“居心地のよい洞窟”をコンセプトに、砂岩や岩肌を思わせる素材と有機的なデザインで、他店とは一線を画す存在感を放っている。
　店舗デザインを手がけたのは、株式会社ヴァンドームヤマダの社内デザイナー・立野修史氏。ブランドのリブランディングを背景に、落ち着いた空間でゆったりと買い物ができるよう、店舗デザインの方向性を大きく転換した。ルミネ立川店は、その新たなスタイルを体現する先駆けで、今後の店舗展開におけるマスタープランの基盤となる、重要な一店舗でもある。
　「ブランドコンセプトを決定する企画チームと連携しながらイメージを練り上げていくなかで、“洞窟”のような空間というアイデアにたどり着きました」と立野氏は語る。
　「ジュエリーに使われるダイヤや金属は、地中深くから採掘される鉱物です。実際に洞窟で採れるわけではありませんが、そうしたイメージから“洞窟の奥深くで輝くジュエリー”という世界観を思い描きました」。

“余白”を多くとったデザインで、展示するジュエリーの点数は従来に比べてかなり絞り込まれている。

　店舗内の構造柱は、空間の一部として取り込み、奥行きと回遊性を持たせたレイアウトに。曲線的で有機的なフォルムは、自然に足を奥へと誘導する設計になっている。
　「ジュエリーの店舗は、さまざまなスタイルの商品を受け入れられる“余白”のような空間であることが理想です。だからこそ、デザインは極力シンプルに。素材には有機的なものを選びつつ、過度な装飾は避け、どんな商品が並んでも全体として調和がとれるしつらえにしています」。

壁付けのショーケースは上部をクリアなガラスで製作し、商品を引き立てながら視認性を確保。カウンター部分はコーリアン®︎と木目で製作。異素材の組み合わせと曲線のディテールが、上質でモダンな空間を引き立てる。

デザインの柔軟性を具現化するマテリアルへのこだわり

　立野氏は、有機的な曲線や素材感を実現するため、壁は櫛引仕上げの左官、床には独自の柄を持つピンタイルを用い、自然の風合いと人工素材の洗練を絶妙に融合させた。
　また、新しい店舗デザインの世界観をより完璧なものにするため、什器も有機的なラインでデザイン。それを具現化するには、自由曲線を描ける素材であることが必須条件となった。
「あらゆる素材を検討して、最終的に残ったのがコーリアン®︎“サンドストーン”でした。コーリアン®︎は加工性が高く、プロの手によって曲面や立体的な構造も実現できます。設計図もフリーハンドで曲線を描き、それをもとに図面化していきました」
　天板だけでなく、腰回りにも同素材を使用することで空間に統一感と上品さを持たせ、他の素材との組み合わせによってさらなる高級感も演出している。

天板から側面、引き出しまでをコーリアン®︎で統一し、ソリッドで洗練された印象に。滑らかなアール形状や一体感のある造形に、コーリアン®︎の高い加工性が活かされている。

　「コーリアン®︎は、手触りがなめらかで傷ができにくく、見た目の上質さと実用性のバランスが非常に優れています。ジュエリーが傷つくリスクを最小限に抑えながら、空間に温かみと高級感を添えてくれる理想的な素材でした」と立野氏。
　「サンドストーン」の色合いは、上品な中にも自然なゆらぎがあり、空間全体に奥行きとリズムを与えている。
　「単調な印象にならないよう、離れて見ても単色に見えないことも決め手になりました。コーリアン®︎の“サンドストーン”は、一見シンプルに見えますが、細やかな斑（まだら）が感じられ、時間帯や照明によって表情が変わるのも魅力のひとつです」
　コーリアン®︎の優れた加工性は、什器の曲面やアール形状も美しく再現。高級感、耐久性、柔軟性を兼ね備えた素材として、店舗のコンセプトを支える重要な役割を担っている。

(文：永山八重)