

PHOTO:YOSHIHITO IMAEDA
ロッカー棚の反対側に造り付けたソファ席はリラックススペース。座ると前の窓から山並みが眺められる。「スミグレー」の天板に光が映り込んで美しい。
デュポン・MCC株式会社
2025.8.28
PHOTO:YOSHIHITO IMAEDA
ロッカー棚の反対側に造り付けたソファ席はリラックススペース。座ると前の窓から山並みが眺められる。「スミグレー」の天板に光が映り込んで美しい。
株式会社フクダは、1954年に創業。島根県を拠点とする地域密着型の総合建設会社として発展してきた。当初は土木工事を中心に事業を展開し、道路、橋梁、河川整備といったインフラ整備を通じて地域の基盤づくりに貢献。その後、建築事業にも進出し、公共施設、住宅、工場など多様な建築を手がけている。
2025年4月に完成した新社屋の計画では、 “地域との調和”と“働きやすい環境づくり”が最も重視された。「『ここで働きたい』と思える環境を社員に提供できて、地元の人にも愛される新社屋にしたいと考えました」と代表取締役副社長の福田佳典氏は語る。その言葉通り、外観は周辺の風景に馴染むようにデザインされ、屋内も社員が自然に集まり、交流が生まれるよう、植物を取り入れた開放的で居心地の良い空間となっている。
階段を上がるとオフィス空間が広がり、中央には複写機の隣に大きなワークテーブルが設置されている。ここはいわば、“部署間の交差点”。プレゼン資料をまとめたり、コピーを取る作業に使われるテーブルだが、人が集まることで出会いが生まれ、部署の垣根を越えてコミュニケーションが育まれる場となっている。ワークテーブルの天板はコーリアン®「スミグレー」。 “墨に五色あり”といわれるような深い階調を持つ色柄で、光の加減や見る角度によって濃淡が浮かび上がり、空間に豊かな奥行きをもたらしている。
「スミグレーのどこか和のやわらかさを感じる色柄は、大きなテーブルに使っても主張しすぎず、上質感を演出できます。手触りの良いマットな質感で、広げた書類が視認しやすい色味であることも決め手になりました」とデザインを手掛けた株式会社エリアコネクション代表取締役のワタナベユウキ氏は語る。
2階オフィスの中央に設置されたワークテーブルは、社員が自然に交差する場所。墨のようなニュアンスを持つ「スミグレー」のマットな質感とソリッドな存在感が、執務空間に凛とした印象を与えている。墨色のテーブルは、資料を広げたときに見やすいのも利点だ。
オフィスの窓側には、ソファと表裏一体になったロッカー棚が据えられており、その天板にも同じ「スミグレー」が使われている。黒いロッカーが整然と並んだ上部には観葉植物を収めたフラワーボックスを設置。黒と「スミグレー」、そしてグリーンが織りなす色彩のハーモニーが上品で美しい。窓から自然光が差し込むと、コーリアン®の表面に柔らかな光沢が生まれ、素材の魅力がより際立つ。
2階のロッカー棚の天板も「スミグレー」で統一。12列×3段の黒いロッカーが整然と並び、上部には観葉植物を収めたフラワーボックスを設置。機能性と癒やし、温もりを兼ね備えたデザインだ。
1階のパブリックエリアに設けられた3つのトイレにもコーリアン®の意匠性が活かされている。女子トイレの手洗いカウンターは「アロールートⅡ」。ホワイトベースに青みを帯びた模様が柔らかく浮かび、滑らかさと深みを感じさせる。来客用のトイレに用いられたのは「グレイッシュテラゾー」。落ち着いたグレーをベースに大小の粒が浮かび上がる石目模様で、黒の床タイルとも調和して洗練された印象だ。そして、多目的トイレは「ラバロックⅡ」。グレーや茶が絶妙に混じり合った火山岩を思わせる力強さを感じさせる。
女子トイレの手洗いカウンターは「アロールートⅡ」。青みがかったホワイトベースで、美しさと清潔感が両立。間接照明の反射を受けて、鏡に肌色がきれいに映る効果もあるという。
「実はトイレのような空間にこそ企業の姿勢や価値観が表れます。ですから、雰囲気や清潔感を意識してデザインを考える必要があると私は思います」とワタナベ氏。実際、完成後、トイレを見た瞬間に社員から歓声が上がったという。福田氏も、「我々は建築業を生業としているので、施工の精度も重視しましたが、コーリアン®は継ぎ目が全く目立ちません。仕上がりが美しいからこそ、高級ホテルのトイレのような洗練された印象を与えることができたのだと思います」と笑顔を見せる。
来客用のトイレの手洗いカウンターは「グレイッシュテラゾー」。グレー地に散りばめられた大小の粒模様が動きのある表情を演出。黒の床タイルと合わせてコントラストのある洗練された印象に仕上げられている。
多目的トイレの手洗いカウンターは「ラバロックⅡ」。火山岩を想起させる色柄のコーリアン®に間接照明が柔らかな光を拡散し、重厚感とやさしさを併せ持つ空間を創り出している。
新社屋のオフィスは社員に大好評で、「家族に職場を見せたい」という声も聞こえるほど。「新社屋を訪れた学生さんや取引先から『建設会社のイメージが変わった』と言われるようになりました。空間の印象が人材採用やビジネスの可能性を広げてくれると実感しています」と福田氏。新社屋を舞台にさらなる飛躍を目指して、フクダは次の時代を切り拓こうとしている。
(文:菱沼 晶)
【株式会社フクダ】
●設計/有限会社 前田設計事務所
●デザイン監修/株式会社 エリアコネクション
●施工/有限会社 辻木工、有限会社 建商
●使用色/スミグレー、ラバロックⅡ、グレイッシュテラゾー、アロールートⅡ