PHOTO:YOSHIHITO IMAEDA
デュポン・MCC株式会社
2023.10.6
PHOTO:YOSHIHITO IMAEDA
京都市東山区の疏水沿いにある、寺院を思わせるユニークなデザインの建物。歯科材料や歯科用機器の開発・製造・販売を手掛ける総合メーカー、松風の新社屋「あゆみテラス」だ。松風は1922年の創業以来、数々の「日本初」、「世界初」となる歯科医療製品を送り出してきた。現在では人工歯や研削・研磨材分野で国内トップシェアを誇り、欧州・北米・南米・アジアなど130カ国以上に製品を提供している。
同社では創立100周年事業の一環として、2023年3月、本社敷地内に「あゆみテラス」を竣工した。外観は大きく張り出した庇と、地元の名刹である東福寺を想起させる入母屋屋根が特徴的だ。「鴨川や市内中心部方向を望むテラスには緑を植えるなど、京都の景観や環境との調和を図ったデザインになっています」と総務部の飯田雄幸氏は語る。1階には新たにショールームが設けられ、歯科器材等の展示・デモスペース、松風の歴史展示コーナーなどが配置されている。
「あゆみテラス」のエントランスへ入ると、光に彩られた白のスタイリッシュな空間が広がっている。正面には歯をイメージした造形壁があり、床と天井から突き出したような格子の曲面がアクセントとなっている。壁一面に沿って造り付けられた什器には人工歯や診療・技工材料、セルフケア製品などが整然とディスプレイされ、それらを眺めつつ足を進めると自然に楕円状にデザインされた格子壁の向こうに広がる展示スペースへと誘われていく。
その格子壁の内側は歯科クリニックの診療室のようなしつらえで、メインとなる奥の什器カウンターには同社の注力製品であるCAD/CAMシステム機器が展示されている。こうした壁面什器のカウンターや、点在するタワー型の円形トレー什器、曲がり壁に沿ったPCカウンターなどに
どのようなコンセプトから、このようなデザインが生まれたのか、空間デザインを担当した株式会社イリアの須摩淵真範氏にお話をうかがった。
「ショールームは松風様の歴史と最新技術を紹介するおもてなしの場で、いわば企業の顔となるエリアですから、“清潔感のある空間”、“印象に残る空間”、“歴史と最新の融合”の3つをコンセプトに、白と艶感を活かしてデザインしました」と須摩淵氏。什器カウンターに
「板状の素材でありながら曲線的なデザインが可能ですし、シームレス加工でジョイント部の継ぎ目がほとんど目立たない仕上がりにできることも採用の決め手でした。白のミニマムな空間の中に少し硬質な雰囲気を取り入れたかったので、その点でも
白の世界は変幻自在。イベントの際にはモニターの映像や照明色をカラフルなものに変えることで、華やかな演出ができるのも魅力だ。「主に歯科医療関係の専門家が見学されるのですが、美しくて見やすいアートスペースのようなショールームにみなさん感動してくださいます」と顔をほころばせる営業部の岩切信也氏。訪れた人の印象に残る空間デザインが、『SHOFU』ブランドのさらなるイメージアップに大きく貢献しているようだ。
【株式会社松風 ショールーム】
https://www.shofu.co.jp/
●設計・施工/鹿島建設株式会社
ショールームエリアに関わる設計・施工/株式会社イリア
●協力会社/株式会社ビルケン
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●使用色/リバーパール