天空の美術館で、視線を集め、人の流れを導くサイン 森美術館 センターアトリウム改修工事 Mori Art Museum, Tokyo

2021.07.28

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PHOTO:YOSHIHITO IMAEDA

六本木ヒルズ森タワー 52階のセンターアトリウム。コーリアン® デザイナーホワイトで製作された
パーティションのようなサインが並び、改装前に比べると、空間の印象が明るく軽やかに変わった。

六本木ヒルズ森タワー最上層53階にある森美術館が、2021年4月にリニューアルオープンした。
約3カ月間の工事期間で、設備の修繕・改修を行ったほか、新たにオンラインやQRコードを活用した新チケットシステムを導入。より利便性の高い美術館へと進化した。
 
六本木ヒルズ森タワー2階「ミュージアムコーン」にある美術館・展望台専用入口から入った来場者を、52階で出迎えるのが吹抜けの大空間「センターアトリウム」だ。ここから更にエレベーターで1階上にある美術館へと上がる。美術館だけでなく、展望台「東京シティビュー」や「森アーツセンターギャラリー」に来場した人たちも行き交う、動線の要所ともいえる空間だ。
リニューアルにあたって森美術館の改修担当チームは、センターアトリウムにて、来場者をスムーズに目的となる場所に誘導できるよう、認知しやすいサインを設置することが重要だと考えた。

券売機はサインに隠れるように配置。機械の存在感は消しながら、来場者がチケット売り場を素早く見つけられるように、光るサインで誘導している。

今回の改修を担当した、森美術館の松橋龍生氏にお話をうかがった。
「改修前は、サインがかなり高い所に掲示されていたため、来場者の視界に入りにくいという問題がありました」。空間の天井が非常に高いことや、国際的に著名な建築家であるリチャード・グラックマン氏が手掛けた空間のデザイン性を損なわないよう配慮したことが、その理由だという。
 
そこで松橋氏は、空間の意匠との親和性を保ちながら、来場者が認知しやすいサインにするという課題を解決すべく、デザイン担当のGKグラフィックス、製作担当の美和ロックの担当者と協議を重ねた。
「華美な掲示を抑え、できるだけシンプルなサインにしたいと考えていました。単に分かりやすくということなら、地下鉄のサインのように上から吊す方法もありますが、支柱や吊りパイプなど、本来見せたくない要素も目立ち、空間の意匠性を損ねてしまいます。また、まれに入口・出口などの動線を変更することがあるので、それに対応できる必要もありました」。

最も大きなサインは幅4200mm×高さ1800mm。シームレスジョイントが可能なコーリアン®︎なら、大きな面も継ぎ目なく製作することができる。

そこで提案されたのが、コーリアン®︎で製作したパーテーションのようなサインだ。アンカーで固定するので、必要に応じてアンカーを抜き差しして移動することもできる。最大で1800×4200mmという大きな面となるサインの素材に選ばれたのはコーリアン®︎だった。
「空間をより明るくすることも目的の一つだったので、白系のコーリアン®︎を採用しました。以前より軽やかな印象になったと思います。また、センターアトリウムは天井が高いことに加え、照明の明るさを抑えているので、夜間は特にサインが見にくいという問題もありました。そこで、文字を光らせる内照式サインにすることで、視認性を高めました」。
 
製作されたサインは、一枚板のような凹凸のない平面でありながら、文字だけが光って浮かび上がるデザイン。仕組みは、ベースとなるコーリアン®︎「デザイナーホワイト」に文字を切り抜き、同じ形にカットした透光性の高いコーリアン®︎「グレイシアアイス」をはめ込んでシームレスジョイントすることで、内側から光を当てると文字だけが光って見えるというもの。そうした細工ができる点も加工性の高いコーリアン®︎の特長と言える。

どのサインも、薄型でありながらLEDによる内照機能を備えた自立式。文字部分には透光性の高いコーリアン®︎「グレイシアアイス」を使用。

今回の改修では、センターアトリウムに置かれた6つのサインのほか、QRコードを読み取る端末を置くカウンターやスタッフの作業用カウンターなども、コーリアン®︎で製作された。
「いろいろな形でコーリアン®︎を使った結果、素材としての上品さや、堅牢で、汚れに強いといった特性をあらためて認識し、幅広い用途に使える素材であることを実感しました」と松橋氏。
製作されたサインやカウンターは、それぞれ個別の機能や形状を持っているが、素材を統一することで視覚的にシンプルになり、伝えたいメッセージや印象を、来場者にまっすぐ届けている。コーリアン®︎の汎用性の高さは、「来場者が認知しやすいサインにする」というコンセプトの実現にも貢献できたのではないだろうか。
 
「当館は1日5,000人を超える来場があるため、汚れに対する強さにも期待しています。その点は、これまでにもインフォメーションカウンターや水回りなどでコーリアン®︎を使用してきた実績がありますので、耐久性、メンテナンス性への信頼がありました」。
万が一、破損した場合も簡単に補修ができ、施工当初のように、一枚の無垢材のように見せることができる点も、こうしたパブリックなスペースでも安心して使っていただける要素の一つだ。

(写真左)QRコードリーダー用の什器。オンラインで購入したチケットのQRコードを上部の小窓にかざして読み取らせる。(写真右)エレベーター前に設置された出口案内。目に入る情報量が多い場所でも、シンプルなサインは視認性が高く、来場者をスムーズに誘導する。

【森美術館 センターアトリウム改修工事】
https://www.mori.art.museum/jp/
●デザイン/株式会社GKグラフィックス
●製作/美和ロック株式会社
●協力会社/株式会社ヤマテ・サイン、株式会社ダイカン
●コーリアン®︎加工/マーブル建材株式会社
●使用色/デザイナーホワイト、グレイシアアイス