PHOTO:YOSHIHITO IMAEDA
2階の回廊をのぞむ吹き抜けのLDK。テラスへと開かれた空間の中で、流線を描くキッチンが床から連続するように広がり、オブジェのような存在感を放っている。
デュポン・MCC株式会社
2026.6.9
PHOTO:YOSHIHITO IMAEDA
2階の回廊をのぞむ吹き抜けのLDK。テラスへと開かれた空間の中で、流線を描くキッチンが床から連続するように広がり、オブジェのような存在感を放っている。
閑静な住宅街で、ひときわ存在感を放つモダンな邸宅。LDKに入ると、ダイナミックな空間構成に目を奪われる。大開口サッシで外の広いテラスとつながり、2階の回廊をのぞむ吹き抜けと相まって圧倒的な開放感を生み出している。そこに据えられているのが、アート作品のような有機的な造形のキッチンだ。テーブルからシンク、そして足元のステップへと流線を描いて連続するフォルムが、床から立ち上がり、空間をなめらかに横断するかのように広がっていく。
カットと曲げ加工を組み合わせることで実現した滑らかな流線デザイン。コーリアン®ならではの加工性とシームレスジョイントにより、異なる面がまるで削り出したかのように自然に連続している。
本邸の設計を手がけたのは、株式会社狛デザイン一級建築士事務所の狛亜津紗氏。「この住宅では外部とのつながりや段差による空間の切り替えなど、建築全体に連続性をもたせて、それぞれの場所がゆるやかにつながり、ひとつの空間として感じられることを大切にしました。その中でキッチンも、単なる設備ではなく、使える造形物であり、空間の流れをつくる要素として考えています」と語る。
その意図を受けて、キッチンの製作を担ったのが、今井商店の代表であり、家具デザイナーの今井智仁氏である。家具としての精度と、建築との一体性。その両立を図りながら大胆な造形を創り上げた。素材にはコーリアン®を採用し、途切れることのない曲線が連続する複雑な形状を、継ぎ目を感じさせない一体的な仕上がりで実現している。
「このキッチンのように面が連続していくデザインでは、加工の精度がとても重要になります。その点でコーリアン®は加工の自由度が高く、設計者のイメージしていた形を無理なく叶えられる素材でした。また、清掃性や耐久性といった実用面でも優れた性能を備えていますから、キッチンの素材として最適でした」と今井氏。シンクもカウンターと同じコーリアン®ですっきりと一体化している。
2階から見下ろすと、キッチンの造形がより鮮明に浮かび上がる。カウンターテーブル、その先で一段高く設けられたシンク、そして窓外のテラスへと導く下段のステップが連続しながら曲線を描いて分岐していく。ひとつながりでありながら役割ごとに領域を描き分けるデザインが、空間にリズムをもたらしている。
間接照明に彩られた夜の表情も美しい。光によって生まれる豊かな陰影が、キッチンを“使える造形”に昇華させ、LDK空間に上質のくつろぎ感をもたらしている。
コーリアン®の色柄は「ニュートラルアグリゲート」。淡い濃淡を配したベースカラーに繊細な粒子が散りばめられたデザインで、空間に自然に溶け込みながら、造形の輪郭をやわらかく引き立てている。
「強い柄や色だと、どうしても形よりも素材の印象が前に出てしまいます。今回はキッチンのフォルムそのものを感じてもらいたかったので、ニュートラルで奥行きのある表情のものを選びました」と狛氏。主張しすぎない色合いでありながら、光の当たり方によって微妙に表情を変えるニュートラルアグリゲートは、空間全体のトーンとも穏やかに調和している。
天板はシャープに整え、側面は熱曲げ加工によってなめらかな曲面を形成。シームレスジョイントにより、継ぎ目を感じさせない仕上がりが全体の一体感をより高めている。
製作にあたっては、建築との関係性も重要な要素となる。床や躯体にはわずかな個体差があるため、現場での微調整を前提に計画が進められた。
「分割の方法や調整の余地をあらかじめ考えておくことで、最終的にすっきりと美しく収めることができました」と今井氏。そうした周到な検討と現場での丁寧な調整の積み重ねによって、キッチンは建築と自然に溶け合い、ひと続きの風景として美しく立ち現れている。
「キッチンがきっかけになって、パーティーなどで空間全体がより豊かに使われるようになればと願っています。料理や食事の時間が楽しくなることはもちろんですが、人が集まって会話が生まれるような場所になってくれたらうれしいですね」と狛氏。
その言葉の通り、招かれた人々は、このキッチンの彫刻のようなフォルムに自然と引き寄せられ、言葉を交わし、笑顔が重なり合うひとときを共有していくことだろう。
(文:菱沼 晶)
キッチンと同じ「ニュートラルアグリゲート」を仕切り板に用いた飾り棚。溝に挟み込むことで、斜めの角度を固定。ライティングが創り出す陰影が美しい。表裏で異なる表情を見せるコーリアン®の特性を活かし、リビング側からの見え方も意識して配置している。
ワイドなボウルが印象的な洗面化粧台。二つの水栓を備え、二人が並んで洗面できる仕様に。サイドに可動式の板も設け、小物などの一時置きとして使えるようにしている。コーリアン®︎の優れた加工性を活かし、シンクも排水口の蓋も同色で製作。
【大阪府住宅兼オフィス】
●設計・キッチンデザイン/株式会社狛デザイン一級建築士事務所
●キッチン設計・製作・施工/神戸 今井商店
●コーリアン®︎加工/マーブル建材株式会社
●使用色/ニュートラルアグリゲート